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 東京都千代田区の霞が関と紛らわしい東武東上線霞ヶ関駅を最寄りにする東京国際大学は、ネット上でぼろ糞にこき下ろされている所謂『Fラン大学』である。電車の吊り革広告や看板に載せられた『就職に強い』と云う文言を鵜呑みにし、高卒より大卒の方が就職の幅も広がるだろうと考えて合格し入学したが、彼は就職活動を懸命に行いながらも内定を取ることが出来なかった。就職戦線が売り手市場と云うのは東大や京大、早慶などの高偏差値の難関大学の話であり、Fラン大学など名前を書いただけで即刻お祈りメールだ。名前を書いただけで入学出来る大学に入ると、大学の名前を書いただけで就職出来ない地獄が待つ。  寺田は就職活動時代、どうして自分だけこんなに就職が難しいか疑問に思ったことがある。リクルートスーツに身を包み、電車内の扉の上部に嵌め込まれた他校の広告に目を向けると、 「就職内定率100%!」 と書かれていた。しかし広告の下部の方をよく見ると、クレジットカードの規約文の如く小さな文字でこう書かれていた。 「※就職希望者に占める内定率です」 つまり、就職出来なかった人は『卒業生』でも『就職希望者数』に含まれていないから、分母が減るので100%に出来るのだ。 (詐欺じゃん!) 寺田の存在は来年の広告に載る内定率には換算されないだろう。
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