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 寺田達が歩いているのは、右端の歩行者用通路だ。左には自転車専用の通路があり、その左に自動車用道路が在る。警備員の詰め所と植え込みを挟んだ後、進行方向が逆の車線になる。その向こうに自転車通路や歩行者通路は無かった。だから南門の左側の駐車場に乗用車を止めた社員達は、横断歩道を渡って寺田達の歩く歩行者通路を利用しなければならない。近くの電柱に、南門前の横断歩道をあまり使わないように指示する小さな掲示板が貼られている。  寺田達の歩く道は徐々に下り坂になっていく。下り坂の上に車のテストコースがある。道は掘り下げ式のアンダーパス。寺田も東武東上線の鶴ヶ島若葉駅間の線路下やスーパー・ベルクの近くを走るJR八高線の下を通ったことがある。テストコースのために掘り下げられた道と云うのは自動車工場ならではと思った。おかげで行きは下り坂だから楽だが、折り返しから上り坂になるので、仕事帰りで疲れている時にこの道を歩かされるのは嫌だなぁと寺田は少し思った。歩行者通路自体も道幅は狭いから、20人集まっただけでちょっとした行列や渋滞が起きたようにゴミゴミした。高架下は日光が当たらないから暗く、じめじめしている。だが短いトンネルを抜けて上り坂に差し掛かると、やわらかい日の光、爽やかな涼しい青い空、道の左右を彩る檜の緑が見えてくる。  しかし寺田は自然など構わず、人混みに紛れて歩きながらモンストを遊び始めていた。
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