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 寺田達は長円形の敷地沿いを内回りして進んでいる。敷地の中は真っ平ではなく、寺田達の歩いて行く道はどんどん下り坂に変わる。すると、昨日寺田が乗ったマイクロバスが通った正門から続く道とぶつかった。高架のテストコースのせいで地面が掘り下げられているから、それに合わせて交差する道も少しだけ下るのである。  此処でも寺田達は運送トラックを先に通した後、横断歩道を渡らされた。  寺田は確信した。歩行者よりも運搬車を優先した方が生産効率は高いに決まっている。スクランブル交差点で歩行者が行き交って、車が止めさせられている東京や埼玉を思い浮かべる。あれは効率が悪い。シンガポールが富裕層の税金を安くして発展させているのを寺田はふと連想した。日本も貧乏人の面倒なんて見ないで、富裕層の税金を安く設定し、海外から多くの金持ちを招き入れた方が税率は安くても受け取れる税額自体は増えるから、その方が良い気がしてきた。でもテレビや新聞は貧乏人に報道しているから、この発想を大半の日本人は受け入れないだろうと結論付けられる。大半の有権者=日本人は貧乏だからだ。  寺田はゲームと妄想を終わりにした。  寺田は、大きな車道を挟んで右側に在る工場を見た。コンテナを展開しているトラックの荷台にフォークリフトがパレットを搭載しているのを見掛ける。灌木(かんぼく)と桜の木が道路と工場とを区切るように植えられている。桜は工場の中に置くには勿体ないほどの満開の華を咲かせていた。会社の花見は工場内で行うのかな? と寺田はふと思った。木々と工場の間にも広いスペースが設けられていて、フォークリフトやトラック達の駐車場や作業場、使用されていないパレット置き場にされている。四角い工場から僅かに突き出ている箇所は、小さな四角い窓の存在からすぐにトイレが在ると分かった。桜と植え込み以外は尽くアスファルトで舗装されている。
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