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 山崎が寺田に伝えたのは、 『昔の常識が何故通用しなくなるのか?』 それは時代が進めば周辺の環境が変化するからと云う趣旨だった。山崎は他にも『王貞治が868本のホームランを打てたのは、選球眼が良かったから』と云う話もした。王貞治が見逃せば、審判もボールだと信じた。同じような逸話は、視力低下を防ぐため趣味の読書を封印した落合博満にもあると山崎は寺田に紹介した。彼らのような逸材はもう日本人からは現れないと山崎は断言した。何故なら、現代はパソコンやスマホなど人々の目を酷使する環境に変化して、それは子供達にも及んでいるからだ。  離婚して実家に帰って来た自身の姉を山崎は引き合いに出した。山崎の姉は結婚して子供を産んだが離婚して埼玉の実家に帰って来ており、その子供を連れて来ていた。甥っ子を見ていると可愛いとは山崎自身も思うが、この子は残念ながらプロ野球選手にはなれないなと野球に詳しい山崎は確信したと言った。 「だって姉は子育てなんてしてないもん。自分はスマホに夢中で、NHKの教育テレビがベビーシッターしているよ。甥っ子は平気でテレビの画面に接近しちゃうけど、姉は全く構っていない。そりゃ、子供の目も悪くなるよ。最近の子供達って眼鏡が増えたんだって。今、『デンタルネグレクト』って云って親が自分の子供の歯の健康に全く金を掛けないで虫歯の子供が増えているんだけど、子供の目が悪くなっているのを僕は『オフサルネグレクト』と言っているんだ。眼科を英語で云うとophthalmologyだからね。幾ら身体を鍛えても目が悪いんじゃ、ボールにバットは当たらないよ。だから、もう王さんや落合さんのようなバッターは現れないだろうね。取材に来るカメラマン達だって選手の視力を気にしていたら、あんなに眩しいフラッシュも何度も焚いたりしないでしょう。テレビだと『フラッシュの点滅にご注意下さい』ってテロップ出るけど、目に悪いって分かっているんだったら、てめぇらが率先してああ云ったカメラを使うのをやめろよって思っちゃうよね。マジで法律で規制して良いことだと思うよ。良い写真を撮ろうなんて云う自分達の都合ばかり考えて、そんなんだから『マスゴミ』って批判されるんだよ」
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