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次にブランドイメージについての話が為された。三菱自動車や雪印、姉歯建築士の耐震偽装問題など、製品の品質は会社の信用に大きく関わって、それが原因で倒産することも有り得る。自分達は会社のブランドイメージを毀損しないため、如何なる不正も行ってはならないのだと説明を受けた。特に反論することも無い。
この日はこれで終わって、午後5時頃に健康診断で問題のあった人は居ないと通知されると、期間従業員達は1階の食堂の横に在るロッカーへ案内された。ロッカーは縦長で狭いタイプだ。
寺田は会社側が常識的なことしか伝えてこないので不安になった。この会社は自分達がそんなことも分からないと見做して、わざわざ教えなければならないと思っているのだろうか。『飲酒運転は絶対にいけません』なんてわざわざ誓約書まで書かされて云うことか? 寺田は会社の方針に疑問を感じなくもなかった。
翌日は研修棟の左奥に在る資材棟の3階で、電動ドライバーでボルトとナットを脱着する訓練が行われた。寺田は中学時代の技術の授業を思い出していた。社員達の前の机には斜めに向けられた鉄のパネルが置かれていた。ボルトを挿入する穴やナットを巻き付ける螺子の突起が付いたキットである。寺田達は支持通りに、ボルトやナットをくっ付ける練習、電動ドライバーを操作する練習を行った。最初は中々手間取ったが、慣れると段々簡単になってくる。しかしパズドラやモンストならば強い寺田でも、電動ドライバーはまるで勝手が違っている。時間を計って作業させられると、しょっちゅうボルトやナットを床に落としてしまい、電動ドライバーを使う才能が自分には無いと寺田も思わざるを得なかった。寺田は組立に配属されたら、これから先キツいだろうなぁと感じた。
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