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この日の作業が終わりロッカーで着替えた寺田は、研修棟から南門近くのバス停まで日製自動車のロゴが描かれた大型バスに乗った。バスは社員達が広大な敷地で徒歩での移動を強いられないようにするためのモノである。寺田は南門バス亭で停まったバスから降り、アンダーパスの通路を歩いて南門から会社の外に出た。
南門を出ると、目の前にセブンイレブンがあるが、来たばかりで金をあまり持っていない寺田は翌月に引き落としが来る寮の食堂で我慢しようと考えて、入りたかったコンビニを無視した。
南門から寮までの数百メートルは歩かなければならない。歩行者喫煙は法律で禁止されているが、喫煙者達は構わずに歩きたばこで副流煙を蒸かしていた。煙草を吸わない寺田は、此処へ栃木県警に検問に来てもらい、歩きたばこをする日製自動車の社員達から一人残らず罰金を徴収したら結構な金額になるのではないかと思った。副流煙を吸わされることを暴行や傷害と法解釈して、
「正当防衛だ!」
と言って、暴行を加えても良さそうな気がした。
煙草を吸うのか吸わないのか、どちらの方が健康に悪いのか少し寺田には分からなくなってきた。煙草は当然健康に悪い。ところがこれほど煙草を忌み嫌っているのもストレスを溜めている気がして、煙草を吸わないのも精神衛生上悪い気がしてくる。
寺田は、あの茶髪のショートカットの女の子が煙草を吸わない子でいて欲しいと願った。
3日間同じように食堂を利用して、浴場で入浴したが、土曜日は食堂が締まっているのを食堂沿いの廊下の掲示板で確認した。
明日から土日を挟んで2日間休んで、月曜日から新しい職場へと配属されるのだが、金も無いのに2日間も間を置かれて、寺田には休みの日に何をすれば良いのか分からなくなったが、まぁ、自分の部屋でiPhoneを開いてゲームでも動画視聴でもやっていれば大丈夫と考えた。休みの日は宇都宮やインターパークにでも行ったらと提案していた成宮のアドバイスなど、寺田はとっくに忘れていた。
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