6/13
前へ
/109ページ
次へ
 すると、玄田が気遣うように江頭に忠告してくる。 「でもなぁ、江頭。お前も期間なんだから、ちゃんと貯金しないとダメだぞ。いつ首切られるか分からないんだぜ」  玄田の言葉によって江頭が正社員ではないと知り、寺田はかなり安心した。江頭のような愚か者を、日本を代表する一部上場企業が正社員として雇用していたなら世も末だ。正社員の内定を取れなかった寺田でも、世の中の基準や物差しはそれほど狂ってはいないと考えることが出来た。  しかし同時に、こんな奴と同じ扱いなのか、と云う別の絶望感が寺田の胸中に湧いて来た。  室井が玄田に語り掛ける。 「まぁ、良いんじゃない? 若い時だけだから」
/109ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加