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白いマイクロバスがロータリーに向かってやって来た。他に車は無い。マイクロバスはロータリーの中央をぐるりと旋回して、寺田一人だけが待ち受けるバス停の前で停車した。
寺田はバスに乗り込みながら、バスの運転手に質問する。
「すみません、今度新しく期間従業員として入るんですが」
手馴れている運転手は、
「はいはい。では、工場の出入口で降りて下さい。入寮する寮は?」
「白鵬寮です」
「白鵬寮ね。じゃあ現地の警備員さんに道を聞けば案内して貰えるから」
運転手はA4サイズのクリップボードに付いた空欄の名簿の用紙を寺田に見せると、
「此処に名前を書いて。社員証の無い人間を載せたって云う記録が必要だから」
寺田はクリップボードに付いたボールペンを手にして、名簿の紙に『寺田智浩』とフルネームで筆記した。素早く書いたわけでもないのに字が汚かった。
「じゃあ出発まで座って待って」
寺田はバスに乗ってすぐ前、右ハンドルのマイクロバスの運転手席後部に座った。
ペンを握った感覚が寺田には久々だった。
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