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たけしとひろしは龍の部屋の中をうろうろと歩き回っていた。「何か証拠はないものか……」
「いいから、おとなしく座ってろ!」龍がいらいらしながら言った。
きちんと整頓された机の上や本棚をいじり回しながらひろしは言った。「べつに怪しげな写真もねえし、メモも手紙もねえ」
天井や壁を見回していたたけしが言った。「飾ってあるポスターや写真にも怪しいものはないな」
「それにしても、いとこの真雪さんの写真がやたらと多くないか?」ひろしがたけしの方を振り向いて言った。
龍はびくびくしていた。
「ああ、それは前から俺も思ってた。ま、手近な女性モデルだからな。龍のいとこだし」
「そ、その通り。真雪……姉ちゃんは気軽に写真撮らせてくれるから、いい練習になってるんだ」龍が少しほっとしたように言った。
「そうか」ひろしは壁に掛けられた、ひときわ大きな額に納められた写真を顎に手を当ててじっと見つめた。「これって、『シンチョコ』のチラシのやつだろ?」
「そうだ」
「うん。うまく撮れてる。中学生の腕とは思えねえ」
「俺にもプリントしてくれよ」たけしが龍を見て言った。「俺、真雪さんの胸とか脚とか、好きなんだ」
「俺も。ナイスバディの真雪さんの写真、もらいてえな」
「お断りだ」
「何でだよ」
「あのな、写真っていうのは『作品』だ。軽々しくコピーしちゃいけないんだぞ」
「そんなこと言って、こないだおまえが撮ってた球技大会の写真、山ほどプリントして配ってたじゃねーか」
「あ、あれとこれとは別だ。それにこれは真雪……姉ちゃんに許可もらわないと……」
「いわゆる肖像権、ってやつ?」
「そ、そうだ」
「そう言やおまえ、高校では写真部に入るんだって?」たけしが言った。
「そうだな。ラッキーだったよ。写真部なんてどこの学校にでもあるわけじゃないし」
「何で水泳続けないんだよ。せっかく俺たちとここまできたのに」
「水泳は、親に勧められたのがきっかけだったし、俺自身の意志で続けてたってわけでも……ないしな」
「そんなに簡単にやめられるのかよ」
「趣味として続けたいとは思ってる。でも、俺、先々カメラで身を立てたい。ま、いろいろあってな。一応両親も賛成してくれてる」
「そうなんだ、ちょっと感心。おまえ将来のこと、ちゃんと考えてんのな。少し寂しい気もするが……」
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