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「大正解! 百万円!」たけしが言った。「すげえ…………龍、おまえいっぱい出すのな」
「そんなに?」ひろしが言った。龍はもがいている。
「この量、ハンパないぜ。口が結んであって、水風船みたいにふくらんでる」たけしが続けた。「でも、包んでいるティッシュが張り付いててはがれない」
「張り付いて?」ひろしが言った。「どういうこった?」
「つまり、」たけしが手にぶら下げていたそれをゴミ箱にぽいと投げ入れて言った。「コンドームの外側も濡れた状態だった、ってことだよな」
「そっ、そっ、それは……」もはや龍の焦りは最高潮に達していた。
その時、部屋のドアがノックされた。「龍、開けるよ」それは真雪の声だった。
「ま、真雪……姉ちゃん……」龍の身体から力が抜けていった。「な、なんでこのタイミング……」
「いいっすよー」ひろしが、力尽きて床に倒れ込んだ龍から手を離して言った。
「いらっしゃい、ひろし君、たけし君」真雪がドアを後ろ手に閉めながら、笑顔を二人に向けた。「遊びに来てたんだね」
「お邪魔してます。真雪さん」たけしが顔を上げて言った。
「どうしたの? 龍」真雪が床に倒れている龍を見下ろして言った。「何かあったの?」そして彼女はベッドに脱ぎ捨てられていた龍の制服の上着を、手慣れた様子でハンガーに掛け、軽く埃を払って壁に吊した。
「…………」たけしもひろしもその真雪の行動をじっと目で追った。「極めて自然に……」「まるで世話女房……」
真雪はガラスのテーブルに向かって腰を下ろし、両手でほおづえをついた。「何の話、してたの? 三人で」
くんくん……。たけしは鼻を鳴らした。「これか、この匂い……」
「どうした、たけし」ひろしが訊いた。
「この部屋の匂いの元は真雪さんだ。チョコの匂いがする」
「……ということは……」
「もうだめだ……」龍はうつ伏せに伸びたまま、聞こえるか聞こえないかぐらいの小さな声で呟いた。
「何? どうかしたの? ひろし君」真雪が言った。
ひろしは真雪に向き直った。「真雪さん、質問してもいいっすか?」
むくっ! 龍が起きあがった。「お、おまえ、何言い出すんだ?」
「はいどうぞ」真雪がにこにこして言った。
「パイナップルジュースは好きっすか?」
「あたしが一番好きなジュースだよ、パイナップルジュース。なんで知ってるの?」
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