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三つのコップにパイナップルジュースが真雪の手によって注がれた。「なんだ、まだ龍は話してなかったんだ、この親友の二人に」
「まったく、水くさいったらありゃしねえ」ひろしが言った。
「見損なったぞ。いや、逆か。見直したぞ、龍」
「何だよ、それ」
「おまえが普通のスケベな男子中学生だったってことだよ」
「スケベ度、想像以上だったけどな」
「ほっとけ!」
「おかしいと思ってたんだ」
「何がだよ」
「いや、俺たちの水泳部、けっこう可愛いやつも多いし、ナイスバディだし、水着だし。俺たちがあれこれ品定めしてても龍、あんまり絡んでこなかったからな」
「こんな彼女がいたんじゃなー」
「絶対勝てねえよなー、女子中学生じゃ。相手にならねえ」
「なんで黙ってたんだよ、龍」
「だ、だって、恥ずかしいじゃないか」龍は真雪の横に縮こまっている。
「そうやって真雪さんと並んでっと、彼氏っつーより、まるで弟みてえだな。かっかっか!」ひろしが笑った。
「俺たちがおまえをからかうとでも思ってたのか?」
「思いっきり思ってた。ってか、今も思ってる」龍は赤い顔を上げて反抗的に言った。「言いふらしたらただじゃおかないからな」
「そんなことしねえよ」
「俺たちを信じろ」
「大丈夫だよ」真雪が言った。「二人ならちゃんと大事なことは秘密にしてくれるよ。龍の親友でしょ?」
「どこまでなら許せる?」たけしが龍に訊いた。
「ど、どこまでって?」
「いや、公表していいのは、どの程度か、って訊いてるんだよ」
「やみくもに公表するな」
「わかってるって」たけしがグラスを持ち上げた。「龍の彼女はいとこの真雪さんだ、っていうことだけだな、口走るとしても」
「そうだな」ひろしもグラスに口をつけた。
「そ、それ以上は絶対に言うなよ!」
「言わねえよ。訊かれても『本人に訊け』って言うから心配すんな」
「絶対だぞ! 誓えよ!」
「だけど、俺たちも卒業するわけだし、近いうちに公表してもいいんじゃね? おまえの口から」
「なんて?」
「いとこの真雪さんと、すでに中二の頃からカラダを求め合った深い仲だって」
真雪はそんな三人のやりとりをにこにこしながら聞いていた。
龍は一つため息をついて言った。「自分からそんなことまで公表しないよ。面白半分に話題にされるのはごめんだ」
「ま、そうだろうな。でも、いいなー、龍」
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