第一章 キミは誰?

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「…じゃあ、自己紹介ね。僕の名前は風上(かざがみ)侑李(ゆうり)。君と…瑠璃と、同い年だよ」 入学式が終わり、もう皆が帰る頃、黒髪で水色の瞳の少年…もとい、侑李は、腕を後ろで組み、屋上の柵にもたれながら、笑顔で自己紹介を始めた。でも、光る“なにか”が零れ落ちているのを、私は見てしまった。でも、私は、気にしなかった。 風上侑李…なんだか、不思議な名前だ。 相手にだけ自己紹介させるのもあれなので、私も自己紹介をすることにした。 もう知ってるだろうから、意味ないだろうけど。 「知ってるだろうけど、一応…私の名前は氷上(ひょうじょう)瑠璃(るり)。中学1年生で、組は2組」 そこまで話すつもりなんて、これっぽっちもなかったのに。 なんでか、全てを話してしまった。 …本当に、何者なんだろう。 記憶を探っても、わからない。 思い当たる人物が居ないのも、また不思議だった。 「2組なんだ。僕は1組。合同体育では一緒だね」 侑李は、嬉しそうに呟いた。 1組…隣のクラスだ。5組ある中では、案外近いらしい。 「…あれ、クラスは知らなかったんだ」 「そりゃあね。僕は全知全能の神じゃないし」 今日、廊下ですれ違ったっけ。そう思ったけど、様子から見て違うみたいだ。 もしそうだとしても、『もしかして』なんて言葉、普通は使わない。 私の名前も、知らないはずだから、クラスを知らないのもあたりまえか。 …そういえば… 「…キミは…侑李は、帰らなくていいの?」 今の時刻は、11時30分頃。11時45分頃に門が閉まるから、屋上から降りる時間を入れると大分危ない。初日から怒られてしまう。 私は、少し危機感を覚えた。 「あ、本当だ…僕は東門なんだけど、瑠璃は?」 「私は…西門」 どうやら、別々の道から帰るらしい。 侑李は、ションボリとした顔で落ち込んでいた。 少しだけ、本当に少しだけ……可愛いと思ってしまった。 相手は、知らない男の子なのに。 「そっか…じゃあ、続きはまた明日、屋上でね。明日も11時下校だから、11時10分頃に来てくれる?」 「…うん」 「ありがとう」 私達は、明日も話す約束をした。 またね、そう言葉を交わし、別々の門から帰って行った。 『ありがとう』 その言葉が、やけに耳に響いた。
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