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「ん?」
課長が何かに気づいて、財布の下から、私の顔を覗き込んだ。
「瀬~田~。」
「か、課長。偶然ですね。」
そして、課長と一緒にいた女性は、クスクスと笑っていた。
「なんか、ごめんなさい。漫画みたいなだったから。」
そう言って、またクスクス笑った後、彼女は立ち上がった。
「あっ、由麻……」
「ご馳走様。」
「ちょっと、待って。」
「部下が呼びに来たんでしょ。帰ってあげなさいよ。」
彼女は、笑顔で伝票を、課長に渡した。
「あ、ああ……」
「またね。」
手を振って、店を出て行った彼女に、茫然と立ち尽くす課長。
ここに来なきゃ、よかった。
だって、課長のあの、切なさそうな顔、見たくなかった。
「課長……」
「瀬田、ごめん。先に戻ってて貰えるか?」
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