第5章 俺なんてそんなモノだよ

8/12
前へ
/31ページ
次へ
「ん?」 課長が何かに気づいて、財布の下から、私の顔を覗き込んだ。 「瀬~田~。」 「か、課長。偶然ですね。」 そして、課長と一緒にいた女性は、クスクスと笑っていた。 「なんか、ごめんなさい。漫画みたいなだったから。」 そう言って、またクスクス笑った後、彼女は立ち上がった。 「あっ、由麻……」 「ご馳走様。」 「ちょっと、待って。」 「部下が呼びに来たんでしょ。帰ってあげなさいよ。」 彼女は、笑顔で伝票を、課長に渡した。 「あ、ああ……」 「またね。」 手を振って、店を出て行った彼女に、茫然と立ち尽くす課長。 ここに来なきゃ、よかった。 だって、課長のあの、切なさそうな顔、見たくなかった。 「課長……」 「瀬田、ごめん。先に戻ってて貰えるか?」
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

35人が本棚に入れています
本棚に追加