エイプリルフール

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『朝早くにごめんね! どうしても伝えたいことがあります。 この間の身体測定で、学校から病院に行けと言われて、昨日の夜、病院に行きました。 診断結果は衝撃的なものでした。私は頭悪いから、病名を覚えられなかったんだけど。それはどうやら不治の病らしく、10代では前例がないそうです。そして、余命3ヶ月。もう末期で治らないんだということでした。 今まで迷惑ばっかりかけてごめんなさい。あと3ヶ月って短い間だけど、よろしくね。』 親友の夢美から届いたメール。それは悲しさも感じさせず、いつものおちゃらけた夢美という感じだった。 私・菜々は泣くことしか出来なかった。握っている携帯は淡々とメールの受信画面を表示する。 「なんで…………夢美が……?」 その一言に尽きた。 「夢美!」 すぐさま電話をかけた。 「あぁ、菜々か」 夢美はため息をついた。 「なんで……なの」 涙が零れないように歯を食いしばった。夢美の微かな笑い声が聞こえた。 「仕方ないよ……もう決まったことだし、1日でも多く生きようとするだけ。だから泣かないで!」 無理して笑うように夢美は言う。私の頬を水滴が伝う。「ほら、3ヶ月、私と一緒に駆け抜けよう!……死ぬ時に、笑ってなかったときなかったって言いたいもん!………私がすぐもらい泣きするの、わかってるでしょ?」私は慌てて謝り、涙を拭いて笑った。夢美もいつもの笑い声を聞かせてくれた。1日中、夢美のことが頭から離れなかった。「死ぬ」ということへの恐怖が私を襲う。それは周りも同じようだった。 私は夢美も入っているチャットグループのビデオ通話に参加した。 「ねぇ、本当に……3ヶ月後に、死んじゃうんだよね」 友達が悲しそうに言った。 「そうだよぉ?もう、まーた暗い話になっちゃうじゃん!」 「ごめんごめん……」 夢美はまるで死ぬことをも気にしていないようだった。楽しくなると、夢美は自分がそんな状況にいることすら忘れかねない。 私達はただ笑顔を見せることに尽力した。 あっという間に時間は過ぎ去って、通話はついに切られてしまった。会えないこと、顔が見えないこと、声が聞こえないこと、全てが悔しい。2人きりで泊まりたいとすら思った。しかし、マザコンの夢美はお母さんに会えないと悲しくて死期が早まりそうだ。そう考えて少し笑ってしまう。 私はろくに宿題も進めないまま眠りについた。
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