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戸越しにうっすらとだが、男性の呻き声が聞こえた。
それと、ねっとりとした気配が。
彼と目配せをし、躊躇なく戸を開いた。
「失礼します!」
突如、中の光景に頭が割れそうなほどに痛みが増強した。
依頼主は布団の上で蹲り、その上に人ならざるものが正座していたのだ。髪が長く顔までは見えないが、おそらくその出で立ちからして女。彼女は依頼主の首に白くか細い腕を巻き付けていた。
しかし、その表情は少し苦しげだったように見えた。
その表情がゆっくりと此方を向いた。瞳は今にも泣きだしそうだった。
”貴方・・・”
「野川様の奥様ですね?」
”なんで・・・視えるのわたしのこと”
「はい。奥様、野川様からお手をお放しいただけませんか」
”わたしのこと消すの?わたし、わたしもう耐えらないの”
「奥様、わたしとお話ししませんか?」
”話?”
「はい、そのためにわたしは本日此方を伺ったんです」
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