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いよいよ当日、本当にあの時の面接官が二人、迎えに来てくれた。お父さんお母さんが言うには、食事も飲み物もあちらが全て出してくれるとの事だ。なんだか夢みたいだよな。そんな事って、本当にあるんだな。事実は小説より奇なりだ。
ともあれ、新生活がスタートするんだ。面接官二人は男の人と女の人。色々な手続きがあるらしく、僕は待つ間、家族との別れを惜しんだ。
「兄ちゃん元気でね」
「体に気をつけろよ」
口々に兄弟・姉妹が別れの言葉を口にする。
「どこに居ても、あなたは私の大切な息子よ」
と母さん。
「お前は俺の誇りだ」
と父さん。柄にもなく、しんみりしちまった。一人暮らしについて、何やら難しい事を父さんと母さんから色々諭されたけれど、正直なんの事かよく分からなかったんだ。だけど、本当に真剣な両親を見て、取りあえず記憶には留めておこうと思った。今は分からなくても、後から役に立つ事ってあると思うし、無駄な事を言う筈がないと思うから。
どうやら、手続きが終わったらしい。今までに見た事もないようなカッコイイ車に乗せられて、新しい場所に向かって出発した。一人で乗る車って初めてだ。……ちょっとだけ、寂しいかな。
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