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結構長旅だった。今までに聞いた事もない音が聞こえてきたりして正直怖かったよ。でも、ちびってなんかいないぜ! 僕は男の子なんだからな!
そんな訳で、面接官二人が運転する長い車の旅を経て……一人暮らしの部屋に着いたんだ! これから、憧れの一人暮らしが、ついに始まるんだ!
後から知ったんだけどさ、車だと思ってたのは『キャリーバック』ていう名前らしい。僕を運ぶ専用のバックだそうだ。
……ここが、僕の家かぁ。広いな。うわぁ、本当に食べ物も飲み物も食べ放題なんだ! 清潔な天蓋付きベッドは、なんとも魅力的じゃないか!……
とワクワクした。けれども、何もかもが新し過ぎて。あまりにも広くて。なんだか急に怖くなったんだ。シーンと静まり返っている状態に耐えられなくて。僕はすぐに天蓋付きベッドに横たわった。そこで体を縮めて震えあがった。だって、あまりも広くて静かで。空から翼のある怪獣が。陸からは二足歩行の得体の知れない化け物が、僕を襲ってくるような気がして。兎に角怖かったんだ。せっかく用意された新鮮な食ものや飲み物も喉を通らないくらいに。
ひたすら、ベッドに横たわって怯え続けた。いつもなら、沢山の兄弟姉妹と体を寄せ合い、安心感と愛情・所属の欲求が満たされていたのに。
それに、なんだか観察されているよな……? そんな妙な気配も感じたんだ。僕は誰かに見られてる、て。
まさか、まさかとは思うけれど……幽霊、或いは妖怪付き物件だった訳じゃないよな……?
ベッドで縮こまりながら、僕は気妙な感覚に囚われた。確かに、ここは僕一人の部屋なんだ。それは間違い無い。
だけど、だけど何だか……僕の部屋をスッポリ包み込む巨大な部屋があるように思えるんだ。その証拠に、忍び足であるく音が、地の底から響いてくるし、それに、それに……。ヒソヒソ話す声まで天井から響いて来る気がするんだ。
怖い、本当に怖い。得体知れない巨大な何かの気配がする……。
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