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エピソード④ 同窓会 … 。マドンナの姿なし。けれど…。
大分空港に飛行機が着陸した。
俺はレンタカーを借りると、別府の実家に向かった。
実家に、荷物を置き、シャワーを浴びて、イタリアでオーダーメイドした背広に袖を通し、黒いYシャツにワインレッドのイタリア製のネクタイとネクタイピンをし『ナイト』のブローチを胸元に付け、ちょっぴり大人な装いを演出した。
大分市内のAホテルには、同窓会で飲酒するため、別府から30分かけてタクシーで向うことにした。
同窓会会場前の受付で、会費を支払い、会場では、高校時代のクラスメイトと、近況報告などをして過ごし、高校時代の数々の思い出が、甦り、話が弾む。
また、恩師の女担任の、田中由美子先生とも話をして、俺が『青年実業家』をしていることを先生は知っており、誇らしげに、同窓会参加のクラスメイトに話した。
クラスメイトらからは、拍手を受けた。俺は大人として照れがらも、先生に気を使い、この状況を受け入れた。
同窓会が始まり30分…、浅田の姿はなかった…。
「み、みんな…。あ、田中先生、スミマセン…。仕事が残業になってしまって…。」
ワインレッドのワンピースに長くおろした、毛先にパーマの緩くかかった黒髪…、胸元には、誕生石の7月3日の『ルビー』のネックレスが清楚な輝きを放っていた。そう、浅田 漣花が遅れて同窓会に姿をみせたのだ。
「(浅田 漣花…。やっぱり、美人だな…。高校時代の黒髪のショートヘアも、可愛いかったけれど、ロングヘアも似合うな)」
俺は、心の中で呟いた。すると、クラスメイトの一人が冷やかし半分に
「お! クラスのマドンナが、重役出勤だ!」
「違うけん。ホントに残業やけん。急患が入って…。」
大爆笑が起きて、同窓会の場が盛り上がった。
さすが『クラスのマドンナ』である。
まるで『春風』の如し…。
立食ビュッフェ&パーティ形式の同窓会。
クラスのマドンナは、俺を見つけて話しかけてくれた。
「か、甲斐くんだよね?甲斐 健太郎…くん。久しぶりだね。成人式のあとの同窓会も、顔見せなかったし…。
あたし、寂しかったよぉ…。高校でも、仲良くしてた、唯一の男子だったけんね。」
「あ、成人式の時期は忙しくてさ。あ、ところで、残業…、急患って…?」
俺は不思議になり、漣花の職業を聞いた…。
…高校生時代は
「保育士さんになるんだぁ…。」
なんて、俺に、話てたけど…。保育士に急患はないよな…。
謎は深まるばかりだった
…。
エピソード⑤
に続く。
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