第1章

16/26
前へ
/26ページ
次へ
「櫻井さん、紹介しましょう。北條正輝(ほうじょうまさき)。MC、経営コンサルティング部に所属していてね、うちとプロジェクトベースで一緒に仕事をすることが多いんです。北條、こちらがうちの新人である櫻井さん」 北條、と呼ばれた白い方がにっこりと良い笑顔を広げて、響子の元まで数歩ほど近づいて右手を差し出してきた。握手だろうか。 「よろしくね。櫻井さん」 「あっ、はい。よろしくお願いします」 おずおずと差し出された手を浅く握り返すと、柔らかくて暖かい手でわりと勢いよく握り返された。 「それから、殿下良知(とのしたともかず)。うちの所属です」 とのした、と呼ばれた黒い方がそのまま暗黒オーラを漂わせながら浅く会釈をした。 「よろしく」 「よ、よろしくお願いします」 響子は不機嫌さを擬人化したような殿下に、少々面食らっていた。 なにかあったのか、それで機嫌が悪いのか、わからないが取り敢えず挨拶はできた。 あまり近寄りたくない部類の人間だった。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加