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広すぎず、狭すぎず。
その部屋はビルの角部屋になるらしく、大きく窓が取られた明るい部屋だった。
先ほどの部屋のように極彩色の壁紙はないのだが、誰の趣味なのか壁が夜景の壁紙だった。これでは、昼間はともかく夜になると窓の外と同化してしまうのではないだろうか。
さらに不思議なことがあった。
夜景に覆われた部屋の中には、デスクが好き勝手に並んでいる。
あるデスクとキャビネットは窓側をむき、またデスクは角にあり、おまけにキャビネットで背後を遮っているから、そこだけ異様に孤立した感がある。
全部で5つ見えるデスクと椅子、キャビネットのセットはまるでわがまま放題に置かれていた。
これも誰かの趣味なのだろうが、響子にはどうにも理解しがたい趣味だ。
「深澄(みすみ)、殿下は北條とまだ会議中だったかな」
郷谷が声をかけた先にいた女性が、部屋の中央を向くデスクのモニターの陰から立ち上がった。
「あー、っとね。多分そろそろ終わるくらいかな」
長い黒髪が美しい、響子よりも少し年上のように見える彼女は響子をみてから笑みを浮かべた。
「そうですか、じゃあもう少し待ちましょうか」
郷谷がそう応えると、深澄は首を傾げた。
「いいんじゃない? 新人紹介ブリーフィングでしょ。あいつら、もし可愛い担当者だったら、長引くかもしれないし」
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