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一礼して顔をあげると、深澄が小さくぱちぱちと手を叩いていた。
「じゃ、私から。深澄です。深澄綾(みすみあや)。アカウント管理をやってます。内勤半分であとは現場かな。これまでデータ管理は私が兼任してたの。すっごい助かるー! よろしくね」
快活な話し方と笑顔で、深澄が自己紹介をしてくれた。「よろしくお願いします」と返事を返したら深澄もまたこちらこそ、と言ってくれた。
明るくてとてもいい雰囲気の人。響子は少し、緊張していた心が緩むのを感じていた。
「……あの、尾久(おぐ)です。システムとか、やります」
のっそりと口を開いたのは、先ほどの雪男と見間違えた黒っぽい巨体で、尾久と名乗った。「よろしくお願いいたします」と先ほどと同じように返事をして一礼したのだが、サングラスとヒゲのせいで表情がまったくわからない。
当惑しつつ顔をあげると、深澄が呆れたような表情でこちらを見ていた。
「あのね、もぐさんはもぐらなの。本当は穴倉に入って出て来たくない人なんだけど、郷谷さんが無理やり地上に連れて来ちゃったから、こんななの」
「深澄、そういう言い方すると私の立場がないんだけどなぁ」
苦笑いで言葉を挟んだ郷谷だが、尾久はなんにも言わずに立っている。
フォローした方がいいのか、しかし初対面ではどうフォローすべきかもわからずにいると、背後のドアが勢いよく開いた。
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