第1章

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「北條、殿下……あのね、君たち」 「お前らさあ! 空気を読むって知らないのかよ! バカでしょ、バカ確実だよね! いやもう疑問形も要らないよねバカだから! 新人にオリエンテーションしてんだよ、わかんねえんかよ、スケジュールみてんだろうが、職務怠慢でクビにすっぞクソが!」 郷谷がやわらかく苦言をていそうとしたところに、真っ直ぐすぎる深澄のよく通る声が空間を切り裂いた。 隠と陽、二人の男は深澄の勢いに動きを止めた。 「新人?」 「オリエンテーション?」 二人揃っって疑問系が口から出てくるあたり、スケジュールなどあまりチェックしていないのは明らかだった。 ある意味で対局すぎる派手な二人の視線が、深澄を見てから郷谷、尾久ときて櫻井響子に止まった。 「あ、新顔」 「……暗い顔だな」 余計なお世話であるセリフを真に受けて、響子は少々だが苛立ちを感じた。 あくまでも、少しだが。
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