第1章

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「クライアントと接触は」 郷谷の質問に北條はかぶりを振った。 「いえ、直接にはまだ。うちの社員からの情報のみですが、現時点でも十分に案件とするに足りると思います」 「わかった。続けて」 「はい。レストラン春日和は経営面からみると、好調に見えます。前期の売り上げは3パーセントの伸びで、2年連続の黒字を記録しています。チェーン店舗も昨年は更に四店舗を増やしています。ですが、反面。内情はかなりの問題を抱えているようで……殿下」 北條のニコニコした顔が、ソファに向けられた。 すると、膝の上に肘を置き俯いていた殿下が顔を上げた。 「腐ってますよ、中が」 低く這うような声で殿下が吐き出した言葉に、郷谷の目が三日月を描いた。 「ほう、詳しく聞きましょう」
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