第1章

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 殿下が、響子を見た。  それはぞっとするほど怒りに満ちた、目だった。 「報告をありがとう。さて、我々の仕事はあくまでもクライアントとその勤務先である企業の健全なる再生と、社会貢献できうる立場への復帰にあります。 数字はわかりやすく営業状態を教えてくれるが、残念ながら数字とは何かの動向を示す徴候であり、また結果でもあります。 当たり前のことですが、人は使い捨てであってはならない。人材とは、社会を構成する大事な財産なのです。……春日和については、どうやら根本的な過ちを犯しているようです。 このような過ちを放っておくと、いずれは企業自体が終焉を迎えます。まるで大木が中から腐って崩れるようにね。 これは、株式会社レストラン春日和へ経営指南を行う立場として、極めて重要な排除すべき問題と判断します」  よく通る郷谷の声が静かに、しかし強く響いた。
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