12人が本棚に入れています
本棚に追加
3
企業の健全なる再生と、社会貢献できうる立場への復帰ーーーー
郷谷の言葉が、耳をかすめた。
「会議室アラスカだって、あと五分。郷谷さんって、ほやほやーってしているように見えるけど、あれで時間には厳しいんだー」
「あっ、はい」
勤務初日の翌日は、朝からミーティングだった。
少し変わったオフィスの、少し変わった人たちと一緒の部屋にも、響子のデスクは設置されていた。
「っていうか」
「はい?」
ファイルを手に行きかけた深谷が、立ち止まった。
形のいいまゆを寄せて、ミーティングに向かう用意をする響子の周囲を見つめた。
「ものすごい昭和の香りがするんだけど」
「へ」
なんのことか、と思えば深谷の視線の先にあるのは響子が選んだ地味な、本当に地味な事務机だった。
デスク、ではない。
どう考えても事務机と呼ぶのが相応しい。グレーの、冷たそうな地味なものである。
最初のコメントを投稿しよう!