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「シンプルが好きなら、もっといろんなのあったでしょうに。シンプルモダン、ナチュラル系、ミッドセンチュリーっぽいのもいいじゃない?」
「ミッド……はあ」
深澄は地味としか表現のしようない響子のデスク周りを眺めてから、そのデスク上に置いたままだったオフィス家具のカタログをちら、と見た。
好きなものを選んでいいと渡されたが、響子は職場の机がどうであろうとあまり興味はない。そもそも、とりあえずのデスクとして置かれていたままでもよかったのだ。
「あっ、とミーティング開始まであと5分。急ごうか」
「はい」
広いトロピカルな部屋の玄関とは反対側の扉を出ると、木目に囲まれた廊下があった。深澄に続いて進むと、整然と並ぶ木の扉には世界各国の地名が並んでいるのに気づいた。
ニューヨーク、シドニー、パリ、ロンドン、カイロ、アラスカ……
アラスカ、と書かれた部屋に深澄に続いて入ると、やはり内装も落ち着いた木目とクリーム調の壁紙に囲まれた空間だった。
外から見るよりも広く感じられる部屋の中央、楕円形のテーブルを囲む椅子のひとつに、深澄に促されるまま腰掛けた。
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