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「尾久には、春日和のシステム側から内情をデータ化してく欲しいと思います。特に、勤怠状況に関してはデータ化してチーム内で即時共有してください」
郷谷の言葉に、熊のような尾久がのっそりと椅子の背にもたれていた体を起こした。
「……わかりました。みんなの端末から見られるように可視化しておきます」
「頼みます。他に関しては材料が揃ったところでまた指示を出します。最後に、櫻井さん」
「ひっ、はい!」
尾久に指示を出していた郷谷が、響子の名を呼んだからとっさに妙な声が出た。
変な声をあげた響子に、深澄の「寝てたの?」という声なき問いが届いたが、それには全力で首を横に振って返した。
「櫻井さん、あなたには契約どおり事務として、主にチームが必要になる書類などの用意をお願いします。それから、オフィス内でチームからの電話を受けてもらうこともお願いします。書類は基本的にテンプレートがありますし、細かい調整は私の指示を聞いてくれれば大丈夫です。何か質問などありますか?」
「いえ、大丈夫です」
響子はいささか恐縮しながら、返事を返した。
社内勤務で、外に出てゆく社員からの電話をつなぐ。
仕事は書類の準備、しかもテンプレートあり。
とても当たり前で、とても常識的で、とても普通の内容だった。
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