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胸の中に、小さいけれど安堵の気持ちが広がるのを覚えていた。
ここは、あの職場じゃない。
これが、当たり前のごく普通の会社なんだ。
私はやっと、当たり前の仕事に巡り会えたんだ。
胸のうちに広がった安心感が、分厚く積もった不信感と絶望を溶かしてゆくような気がした。
まだ、ほんの僅かだけれど。
それでも、それはじんわりと暖かく温もるものでーーーー
「じゃ、あたしはこのお嬢さんとご一緒したらいいのね」
「はい?」
向けられた言葉に我に返れば、スーツ姿の女性が響子の方を向いて微笑んでいた。郷谷が、細い目を更に糸のように変えた。
「うっかりしていました。美樹さんです。あまり見えないかもしれませんけど、ドクターです。櫻井さんと同じようにオフィスで仕事をしてもらうので、一緒になることが多いかと思います」
紹介されているのだと気づき、響子は慌てて立ち上がった。
「櫻井響子です、よろしくお願いします」
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