第1章

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価値が、意味がない命だ。 ただ生きているだけだ。 こんなの、生きているだけで申し訳ない。 ゴォッ、という音と風が去っていった。 黄色い突起が規則的に並んでいるのが、よく見えた。ここでもう、終わるしかない。遠くから次の音が近づいてくる。どんどん、どんどん音が大きくなる。全てを終えられる音がやってくる。 足が黄色い線を、超えた。 「落としものですね」 男性の声が近くで聞こえて、腕をつかまれていた。 「え、」 振り返ったら、三日月のように細い目の男が笑っていた。 「あなたの命を、拾わせていただきました」 音と風が、背後を通り抜けていった。
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