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熱帯雨林を描いた壁紙から、あざやかな色ガラスを組み合わせた吊り下げ照明まで。
絵画などの装飾品はみえないが、パレットの色をぶちまけたような様々な色が、そう広くはない空間に満ちていた。
目の前には、丸いテーブルと椅子があった。
「どうぞ、おかけください。今、部長が参ります」
「ありがとうございます」
響子は言われた通りに腰を下ろして、まだ感覚の揃わない視線を壁の一部にむけた。
ジャングルを描いたのだろうか。
椰子に、つる植物、絡まるように伸びる枝や葉。
名も知らない緑が繁っている。
ぼんやりと見ていたら、奥のドアが開いた。
「やあ、櫻井さん。お待たせしましたね」
「ご無沙汰しています」
あの三日月の人だ。改めて、と渡された名刺を受け取って再び椅子にかけた。
郷谷士郎(ごうやしろう)と書かれた隣には株式会社フラム、アセットマネジメント部部長と書かれている。
「どうですか、調子は」
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