第1章

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そこまで言ったところで、響子は言葉をとめた。 だから追い詰められていったのだ。 『このくらい、どこの会社にいっても同じだ』 『うちでできないんだったら、どこの会社に行っても使いもんにならんよ』 元上司の言葉が、耳の横をかすめていった気がした。 郷谷は響子が言葉をとめた後も、何も言わずに穏やかな顔のままでいた。 沈黙がおりた。浅くなった呼吸に気がつく頃、郷谷が口を開いた。 「契約書にあることが、事実です。櫻井さんが望まない限り、他の業務をお願いすることはありません。ただし」 「……え」 言葉を途中で止めた郷谷が、笑った。 「面白いと思いますよ、うちの仕事は」 目が、三日月を描いた。 (続く)
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