雀のスーさん

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その子雀は、いつのまにか『スーさん』と呼ばれていた。 春先のことだった。庭先に、一羽の子雀が落ちていた。家のどこかに作った巣から落ちてしまったらしい。軒先などに巣を探してみたが、見える場所にはなにも見つからなかった。 近づいても逃げようともしない。羽毛は生え揃ってはいたけれど、まだ飛べない様子だった。目が見えているのかいないのかさえわからないほどの、ゴマ粒のような目をぱちくりさせてじっとしていた。 拾いあげると、驚いて羽をばたつかせた。以外と元気そうだった。けれど、一度手のひらにスッポリ収まると、おとなしくなった。温かくて弱々しくてもふもふしていた。でもなにかを覚悟したように、じっと固まっていた。 どこかケガでもしているのかと、羽を広げて裏表を観察し、脚を触ったりしたが、別段痛がる素振りもみせなかった。 ぼくは家族にみせ、 「鳥の子は、育てるのが難しいらしいけど、もう毛が生え揃ってるから、もしかしたら飛べるようになるかもしれないね」 と、飼う方向へと話を仕向けた。 両親はとくに反対するわけでもなく、スムーズに飼い始めることができた。
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