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チョコレート・コンフェション
嵐田凜薫と言う男子高校生は、自他共に認めるイケメンだ。
町中を歩けばスカウトマンからの声が止まず、アイドルや俳優と名乗っても納得してしまうほどの美青年である。
そんな青年が、教室のど真ん中の席で頭を抱えていた。あまりにも深過ぎる溜息を吐き出しながら。
学生にとって学業の合間の息抜きである昼休みにこの世の終わりとでも言うような絶望具合であるが、彼を盗み見る女子達の目には憂いに帯びた表情を浮かべ物思いにふけると言う光景が映っており、黄色い囁き声が上がっている。周りにいる男子ですらついつい目を奪われてしまうのだから致し方なく、既に日常となっているクラス風景に凜薫は気にする素振りも無い。
ただただ。
仮病でも使って休めばよかった。
そんな思いでいっぱいになっていた。
クラスの女子生徒たちは素知らぬ顔で過ごしているが、教室のあちらこちらから甘い匂いが漂ってくる、チョコレートの香り。
今日はバレンタイン。
好意を持った相手は勿論、日頃からの感謝の印として、友達や家族との友愛の気持ちとして、もしくは告白の想いとして伝える、日本の文化となっているお菓子を渡す日。
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