チョコレート・コンフェション

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 一般的な男子高校生で横に並ぶ者など数える程しかいないだろう整った顔面を持ち、入学時スカウトが絶えなかったくらいには運動神経が良く、退屈だと思いながら上位常連の成績を収めており、かと言って(おご)る事なく誰とも分け隔てなく接する好感の持てる性格で、絵に描いたような理想の男性像をコンプリートしたような人間とて、それでも年頃の男の子である。学校行事は普通に楽しみにしているし、季節ごとのあやかったイベントに興じたい思いは人一倍ある。バレンタインも例外では無い。  しかし、凛薫はこの日ほど頭の痛い日はなかった。  この優良物件に好意を抱く女子が少ない訳がなく、日頃色恋沙汰に殊更(ことさら)興味を持っていない本人ですら理解できてしまう程、女子同士が露骨な牽制のしあいを繰り広げている。  故に今日という『うってつけ』のイベントの日にはそれなりのお祭り騒ぎになってもおかしくはないのだが―― 「よぉ嵐田。今年もやっぱりチョコゼロだな」  まるでサンタクロースにお願いしていたプレゼントが届いた事を自慢する子供の様に振り返った、前の席の男子が言い放った。心の底から面白そうに。  同い年である相手の年齢以上に子供じみたやり返しに、またもやため息を一つ吐いてから、凛薫は柔和な苦笑いを浮かべる。 「まぁね。けど、荒谷だっていつも貰えてないじゃん」 「だと思うじゃん?」  覚えたての知識を披露する子供そのまんま、前の男子はニヤリと笑う。  凛薫はわざとらしく大袈裟(おおげさ)に顔色をさっと変え、「まさか」と絶句する。 「貰えたのか」 「先輩からな!」     
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