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<3-1>トゥトゥを探して
翌朝、日の出とともに目を覚ました。
空港のロビーに下りていくと、トゥトゥの姿は既になかった。
寝台がわりに動かしたソファは元通り片付けられている。
アムは、不安になってトゥトゥの名を呼んだ。
もしかしたら、何も言わずに出て行ってしまったかもしれない。
死に場所を探す永遠の航海へ。
そう思ったら、背筋が寒くなった。
太陽が昇るにつれ、ガラス張りの正面玄関から朝の光が押し寄せて、空っぽの到着ロビーを染め上げる。
その色はアルマナイマ星の、生命の力強さを感じさせた。
アムは朝日の中に焦って飛び出し、トゥトゥの名を呼ぶ。
「どこ行ったの!?」
空港を一周しても返事は無い。
自転車に飛び乗って爆走すると、滑走路の近くに輪になって座っているセムタムたちの姿が目に入った。
「エンダ!あなたたち、トゥトゥを見てない?」
挨拶もそこそこに、アムが息せき切ってそう言うと、リーダー格のひとりが立ち上がって南を指し示した。
南はセムタムたちの上陸点。
すなわち船出をする場所。
「ありがとう!」
いつもなら整備不順の原因を減らすために滑走路の脇で自転車を止めるが、今日はその禁を破る。
一刻も早くトゥトゥに追い付きたかった。
自転車をこぎながらちらりと見やると、黄金の王の残留物は、昨日から何一つ動かされていないように見える。
破格の相手であるが故に、セムタムたちも対応に困っているようだ。
ドゥラアカト、彼らの長として認められた成人衆の判断を待っているのだろう。
朝日が黄金の王の鱗に乱反射して、恐ろしいまでに美しかった。
クエイ。
トゥトゥがそう言った時の、感情を押し殺した声の欠片が、まだ耳に残っている。
さらに力を込めてペダルを踏みこんだ。
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