<3-1>トゥトゥを探して

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ぱあん、と破裂音がしてアムは前につんのめる。 タイヤがパンクしたのだと思い至ったのは、体の痛みが少し落ち着いてからであった。 気づいたら滑走路に転がっていた。 じんじん痛む体を少しずつ伸ばしながら見る空は、爽やかに青い。 「やっちゃったわ」 この星ではパンクしたタイヤを直せる見込みはゼロに近い。 エヴァンに怒られるだろうな、とアムは思った。 絵の具のような鮮やかな青、吹き流された雲の白い筋。 そこに、ぬっと赤が混じった。 「寝てると踏んじまうぞ?」 アムは急いで上半身を起こす。 ひどく痛かったが、構ってはいられない。 「トゥトゥ!」 「何やってんだドク」 「何やってんだって、あなたがいなくなったのかと思って」 トゥトゥは胸を反らせて、ぶははははと豪快に笑った。 ひとつに結った長い髪が炎のように揺れる。 昨日ココアを飲みながらうじうじしていたのは、いったい何処の誰だったのか。 「さあさドク、朝飯喰ったか?早くしねえと市場ぁ仕舞っちまうぜ」 「市場?」 「じじばば待ってる間に俺らが食うに困るだろ。坂道に料理人どもが陣取ってる。目ざてえやつらだからなあ」 服を探ると、ポケットにはちゃんと小さなメモがしまってある。 衣食住は人々の生活を探るうえで、どんな星のどんな種族に出会った時でも重要なファクターだ。 「トゥトゥはもう食べたの?」 「軽くな」 「一緒に行ってくれない?」 「ドク」 トゥトゥの顔にためらいの色が浮かんだ。 アムはトゥトゥの胸を軽くたたいて(これはセムタムの親愛の仕草)、言う。 「私はね、あなたと一緒にいたって理由で何か言われたとしても、これっぽっちも怖くないの。それよりもトゥトゥと話をしたい。美味しいもの教えてよ。あなたが嫌でなければね」 深く息を吐くと、トゥトゥは頷いた。 「仕方ねえなあ。ドク、どのみち売れるもの持ってねえだろ。釣りに行くか」 「そうこなくっちゃ!」
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