<1-4>エンダ!

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<1-4>エンダ!

こちらの姿を見つけたセムタムの中から、ドクター、という声が上がった。 アムの愛称である。 彼らにはドクターの意味自体は理解されなかったものの、アムという異人を表す言葉として定着してしまった。 群衆との間には木の柵が置かれている。 セムタムの運動神経ならば一跨ぎで飛び越えてしまうだろうが、宇宙空港が彼らの社会で黙認されるようになってからは不法侵入されたことはない。 アムは彼らの作法に従って、胸に手のひらを当て 「エンダ!」 と挨拶する。 セムタムたちからは 「エンダ!」 のおかえしが津波のように押し寄せた。 裸の上半身に成人の証を下げ、ボディーペイントを施し、ズミックという伝統的な七分丈ズボンを穿いた老若男女のセムタム。 鍛え上げられた筋肉質の肉体と、鋭い目と、潮の香りを持つ誇り高き海洋民たちの視線がアムひとりに集中した。 挨拶ののちは、セムタムたちは怖いほど集中してアムの言葉を待っている。 「私は説明し、証を立てます。つい先ほど龍が宇宙船に当たって、鱗が落ちました」 セムタムは外の星からやって来た人間のことをひとつも信用していない。 余所者は我らの言葉も知らず、船にも乗れず、海で自活できず、龍に敬意を払わない。 セムタムにとって価値あるものを何一つ備えていない。 ただ、アムの言うことだけは尊重して聞く。 何故ならアムはアカト、証を立て終わった者、すなわち成人のセムタムと認められているからである。 セムタム成人として認められるための試練をアカ・アカという。 アムはこの試練に、惑星の外から来た人間として初めて参加し、合格した。 これが一年前のこと。 セムタム達はこの試練にために青春のすべてを捧げるようなものだから、アムの合格はあえて基準を甘くしてくれた、つまり彼女の熱意にセムタムたちが動かされた証なのだろう。 そして、成人が<証を立てる>と言った時には、セムタムはそれを真摯に聞かなくてはならない。 彼らの前で、歩きながら拾った龍の鱗のかけらを見せた。
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