<1-7>トゥトゥ登場2

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<1-7>トゥトゥ登場2

やはりそう出るか、とアムは肩を落とした。 成人になっても喧嘩っ早さはちっとも変りやしない。 しかも天にまします神たる龍を指してあいつ呼ばわりとは、セムタムへの挑発としては最悪の部類。 これじゃあただの悪ガキだ。 勝っても負けても知るものか。 わっと歓声と怒号が上がり、肉と肉のぶつかり合う音が響いた。 トゥトゥは、先ほど真っ先に叱責の声を上げたセムタムの首を掴み高々と投げ飛ばす。 その間に違う相手が飛び出してきて二、三発は殴られたはずだが、屁とも思っていない様子で、叩き返して蹴りを入れた。 おおよそ百人ほどの群衆がおり、成人しているということは武芸も身に着けている。 トゥトゥはそのすべてを相手にして殴り勝つつもりであるらしい。 何とも無謀な、と思われるが、それは正々堂々を旨とするセムタム族のこと、一騎打ちで勝たなければトゥトゥの提示した条件、つまり成人が証を立てた条件であるところの「拳で来い」をクリアすることにならず、袋叩きでトゥトゥをのしたところで不名誉なだけである。 そういったまどろっこしい(とアムには思われる)思考回路を下敷きにしたうえで、勝算ありとトゥトゥは考えたのだろう。 「先に調査してるからね」 アムはくだらなくなって、そう告げた。 「おうよドク、すぐに行く」 トゥトゥは殴りかかってきたプロボクサーのような女性の一撃をかわすと、足を引っかけて転ばせる。 卑怯者、とその女性は言った。 トゥトゥは大口を開けて、ぶははははっと豪快に笑う。 「最後に立ってりゃ勝ちなんだよ」 そして、次に挑んできたやつのズボンを片手一本で掴んで宙づりにする。 挑発だけは上手いんだから、とアムはほとほと呆れてしまったのだった。
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