事情はそれぞれ

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「救世主と呼ばれるようになったコルトちゃんを、そうなる前から仲間にしてた。純粋な新人の頃から捜索してたんならともかく、そんな二つ名をつけられる話が流れ出してから探し始めたんだろう? でなきゃコウジのことを知らないはずはないからな」  反論しようとする奴がいるが、俺の言うことを否定するだけだろう。話題の要点はそこじゃない。 「コルトちゃんは、多くの人を助けたい、と思っている。ここにいる方がコルトちゃんは自分の望みを達成しやすい。だからコルトちゃんにすればここに残ることを選ぶ方がいい。異界の部屋で握り飯を配ってくれるコウジと共に同じ活動をしているんだから」  だからこそ、救世主と呼ばれるにふさわしい人物になったんだろう。  つまり公共的な人材と言える。  それがトレジャーハンターの一チームのものとなったら、その人材の争奪戦が起きて、血で血を洗う事態に発展しかねない。 「フロンティアのメンバー全員が何らかの権力で潰されるか、コルトちゃん一人だけ、闇から闇へ葬られるか、それとも……」  ちょっと芝居がかって、一人一人に指をさしてみる。  効果てきめんだな。  コルトに言い寄り、コウジに詰め寄った威勢の強さがどこかに行ってしまったっぽい。 「俺らの世界に連れて帰る。確かに大義名分はある。だがコルトちゃんが持つ力はあまりに大きいってことと、同じメンバーのはずの人馬族の娘を一向に気にかけなかったことが気になった」  言動の良し悪しや正邪は問うつもりはない。  お互い健康第一、生き残るのが第一の商売だからな。  だが、あまりにもあざとすぎたよ、あんたらは。 「せいぜい、仕事先でピンチに陥った時に癒してくれる衛生士って感じの付き合いの方がいいと思うんだ。あるいはフロンティアが、どんな力をも跳ね返すほどの力を持つようになるとかな。財力、権力、行動力に攻撃力防御力……今よりけた外れに上回るとかな」  あんたらは一度、コルトちゃんを守り切ることはできなかった。でなきゃ一人でここにいるはずがないからな。今後同じような難局と鉢合わせした時に、周りの者達は『フロンティアは彼女を守り切ることができるとは思えない』と思うぞ?  ※※※※※ ※※※※※
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