未熟な冒険者のコルト

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「あのっ、じゃあ早速お手伝いしますねっ!」  異世界の女冒険者は、ほんとにこの屋根裏部屋に居座るつもりらしい。  コルトっつったか。  こいつと会話してる間に、握り飯はどんどん持っていかれた。  ショーケースの脇には、俺にとっちゃガラクタとしか思えないアイテムが山と積まれている。  握り飯の代金代わりに置かれるアイテムだが、どんな物でもいいわけじゃない。  貴金属なら歓迎だが、そんな物を持っている奴の方が少ない。    金目の物はダンジョンに出発する前に、預かり所に預けるのが普通なんだと。  だから彼らが仕事に出る時の持ち物は、魔物退治に使える物や自分の身を守るための物が中心になる。  それでも金を持ち歩くときは、目的地に向かう途中で買い物するくらいのもの。  ここに置いていかれるアイテムの中に、時々そんな物が混ざっている。  話を聞けば、百パーセント魔物を倒した時のドロップアイテムなんだそうだ。  だから金銀財宝を持っている魔物も稀にいる、というわけだ。  あくまでも稀。  そんな物を五年くらい見続けてきたが、それでも正体が分からない物の方が多い。  ということでこいつらの握り飯強奪を防ぎながらもアイテムの選別をしなきゃならない。  だがそんなわずかな時間的余裕も、コルトとの押し問答で削られた。 「お、おいっ! お前ら、余分に持ってくんじゃねぇ! どさくさに紛れて二度も三度も近寄るんじゃねぇ! 必要な奴らに渡らねぇだろうが! あ、おい、そこの女! 何それに勝手に触って……、くっ、全くどいつもこいつも!」  コルトは、そんな俺にとっちゃほぼゴミの山に手をかけた。  彼女の世界に運び出すってんなら、それはそれで助かる。  けど、その報酬を求められても、ない袖は振れない。  彼女の方が押しかけてきたわけだから、それくらいの覚悟はしてほしい。  しかし文句なんか、何とでも理由はつけられてしまう。  握り飯はいつもより早く、すべて捌かれた。  何かをしながらこいつらを制するのは無理がある。  それに持ってかれた握り飯をまた戻してもらうのも、話がいろいろとややこしくなる。  人が持ってった後に戻してきた握り飯を、誰が欲しがるかってこと。  気持ちのいいもんじゃないだろう。よほどひもじい思いをしてない限りは。
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