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「器用なもんじゃないか」
さっきまでいくつかの素材が彼女の周りに置かれてあった。
そんなに時間をかけず、それらが一つの物になって生まれ変わった。
その手際のいい仕事ぶりを見て、思わず声に出てしまった。
「えへ。冒険者業より物作りの方が自分でも合ってると思ってるんですけどね」
そんな俺の声が聞こえたようで、コルトは生き生きとした表情を俺に向けた。
……ちょっと待て。
そのグローブ、こっちでも使えないか?
武器と言うには、何となく可愛げがありそうな気がした。
もしもそれが武器じゃなかったら?
例えば家庭菜園の土を耕すとか、そんなに硬くない石を砕く道具になりはしないか?
「え? あ、あぁ、そうですね。戦闘用にするとかなり脆いはずです。けど日用品なら長持ちするかも」
「え? いくら脆くてもそんな装備品があったらかなり助かるんだが……」
横から口を出すこいつらには呆れる。
握り飯ばかりじゃなく、コルトが作る道具も狙ってんのか?
つか、随分目ざとい連中だ。
「日用品ならこっちでも商品として出せる。そうすりゃ店の売り上げもあがりゃ、その金で米も具も買える」
祖母ちゃんの時よりも握り飯の数が少ないとか言う奴もいるが、懐具合が心もとないってもあるんだよな。
大体握り飯のお代代わりに置いてくアイテムを何で持ってくんだよ。
俺の世界で役に立たないような物なら持ってかれるのはしょうがない。無価値なんだから。
けどこっちで金になりそうな物を持ってくなよ。
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