事情はそれぞれ

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「キュウセイシュはどうよ?」 「「キュウセイシュ?」」  発音は同じなんだよな。  でも文字にすると違うよな。 「救世主はコウジさんのことでしょ?」 「それをお前に擦り付けてやる」 「コウジさんってば……。大体私、世界を救うなんて考えられないですよ?」  コルトってば、馴れ馴れしい物言いをしたり丁寧語使ったりしてややこしいな。 「世界じゃねぇよ。声で救う主。救声主でキュウセイシュ」 「おー。コウジってばなかなか上手いわね」  はん。  こっちはどうやってこの渾名を取り消そうかって、ずっと考えてたんだからな。 「んー……でも……」  何だよ。  また弱気の虫か? 「まだその効果とか、力加減とかがしっかりできてないので……」 「そうねー。その力を使うにはまだ未熟って感じよね。初々しさがあるって言うか」  物は言いようだな。  ヘタレ、でも当てはまるぞ、こいつには。 「お姉さん、いろいろおしえてくださってありがとうございましたっ」  苦手なのは人前に立つことだけか。  場数増やせば克服できそうだよな。
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