事情はそれぞれ

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 聞こえてきた泣き声と呻き声はこの人馬族の……言いづらいが、女の子からのようだ。  コルトはまるで赤ちゃんをあやすように、横になった彼女の体をさする。  俺なら、誰か一人に特別扱いするようなことはできない。  事情を知らないからな。  けどコルトはその子のために、囁くような小さい声で子守歌のような歌を聞かせ眠らせた。  それを誰も羨ましがることなく、その場で二人の姿が見える者達は、静かに見守っている。  もちろん見えてない連中は握り飯を頬張っているが。  区分けで言えば、やはりコルトはここにいる連中と同類。  気持ちが分かる分、ある意味平等だ。  症状がひどいものには気をかける度合いも強くなる。  その点俺は、ある意味部外者。  だから誰にでも同じような行動をとる。  けどコルトは、今までとはちょっと違う反応したな。 「……これでよし。あ、ごめんなさいね、トレイ持たせちゃって」  握り飯欲しがってる奴にトレイ持たせてたのかよ!  そいつが握り飯独り占めするかもしれなかっただろ!
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