465人が本棚に入れています
本棚に追加
ほうほう。
ま、その先は大体分かる。
強い魔物と遭遇して逃げてきたんだろ。
見るも無残に破損した防具。
その下に傷跡が見えないのが幸いだな。
出血もそんなにひどくはなく、骨折なども見られないそうだ。
「他の連中と同じ扱いだよ。出たくなったら止めやしないし、ここにいたいなら別に追い出す真似はしない」
そう言えば大学時代、本屋で立ち読みしてたら「立ち読みでしたらご遠慮ください」などと店内で呼びかけられていたたまれなくなった思い出が。
それはどうでもいいが。
何か昔のことを思い出しがちになるな。
気のせいか。
「特別扱いすんなよ? 慰めるために部屋に連れ込むとか、昼飯食わせるとかさ」
「それはするつもりはないんですけど……。冒険者としてのキャリアが浅いらしくて」
そんな話をされても困る。
俺にとっちゃ、だからどうした、俺にどうしろってレベルの話だ。
「相手がどんなんであろうと、俺は俺の出来ることをするだけだ。コルトと同じ世界から来たんだろ?」
「うん、そうなんですけど……」
歯切れが悪いな。
何かあったのか?
「同じ国から来たみたいなんです」
……うん、やっぱり話、聞きたくない。あーあーあー、聞きたくなーい。
「俺は知らん。こっちにはこっちの仕事があるしな。一応お前にもバツは続いてるんだからな? それと道具作りも」
「わ、分かってます……」
俺は米袋を運び込む作業を続行した。
コルトはまたシュースとやらを慰めに行ったらしいが、何往復かして米袋を運ぶ作業が終わった頃、事態は一変していた。
「ふええぇぇっ。コ、コウジさーーーん!」
久々に出たよ、ふえぇが。
「コ、コルト様……。コルト様は、私が絶対お守りしますからっ!」
シュースの下半身は床に寝そべっている。しかし上半身でコルトの下半身にしがみついているように見える。
両足を抱え込まれているコルトは身動きできない。
どっかで見たような気がする。
お姉さまぁとか叫びながらしがみつく年下の女の子のワンシーン。
それにしても一体何があったのか。
うん。
ここは無視するに限る!
最初のコメントを投稿しよう!