事情はそれぞれ

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 ほうほう。  ま、その先は大体分かる。  強い魔物と遭遇して逃げてきたんだろ。  見るも無残に破損した防具。  その下に傷跡が見えないのが幸いだな。  出血もそんなにひどくはなく、骨折なども見られないそうだ。 「他の連中と同じ扱いだよ。出たくなったら止めやしないし、ここにいたいなら別に追い出す真似はしない」  そう言えば大学時代、本屋で立ち読みしてたら「立ち読みでしたらご遠慮ください」などと店内で呼びかけられていたたまれなくなった思い出が。  それはどうでもいいが。  何か昔のことを思い出しがちになるな。  気のせいか。 「特別扱いすんなよ? 慰めるために部屋に連れ込むとか、昼飯食わせるとかさ」 「それはするつもりはないんですけど……。冒険者としてのキャリアが浅いらしくて」  そんな話をされても困る。  俺にとっちゃ、だからどうした、俺にどうしろってレベルの話だ。 「相手がどんなんであろうと、俺は俺の出来ることをするだけだ。コルトと同じ世界から来たんだろ?」 「うん、そうなんですけど……」  歯切れが悪いな。  何かあったのか? 「同じ国から来たみたいなんです」  ……うん、やっぱり話、聞きたくない。あーあーあー、聞きたくなーい。 「俺は知らん。こっちにはこっちの仕事があるしな。一応お前にもバツは続いてるんだからな? それと道具作りも」 「わ、分かってます……」  俺は米袋を運び込む作業を続行した。  コルトはまたシュースとやらを慰めに行ったらしいが、何往復かして米袋を運ぶ作業が終わった頃、事態は一変していた。 「ふええぇぇっ。コ、コウジさーーーん!」  久々に出たよ、ふえぇが。 「コ、コルト様……。コルト様は、私が絶対お守りしますからっ!」  シュースの下半身は床に寝そべっている。しかし上半身でコルトの下半身にしがみついているように見える。  両足を抱え込まれているコルトは身動きできない。  どっかで見たような気がする。  お姉さまぁとか叫びながらしがみつく年下の女の子のワンシーン。  それにしても一体何があったのか。  うん。  ここは無視するに限る!
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