事情はそれぞれ

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 魔法剣士の女の人からお話しを聞けました。  魔力についてです。  いつの間にかみんなが眠っちゃってるのを見てほんとに怖かった。  私一人じゃ何にもできないもん。  誰かが押しかけてきたらどうしようって。  タイミングよくコウジさんが来てくれたから、安心して泣きそうになっちゃった。  でも魔法剣士さんが目を覚ました後であんな風に言ってくれたから、体中から力が抜けそうになっちゃった。  でもでも、びっくりしたら体が固まるってほんとにあるんだねぇ。  よく考えてみたら、私にそんな力があるってことだよね?   今までそんなこと言われたことなかったのに。  って言うか、冒険者の養成所でもそんな話聞いたことなかった。  実際に歌を歌って人の体を癒すなんて人も見たことなかったし。  ほんっとに、まさか私に?! って感じだった。  ずっと前から、魔法と魔術ってどう違うんだろう? って思ってた。  魔法は呪文を唱えることで魔力を射出する方法なんだって。  魔術は、そんな方法を含めて、魔力を外に出して効果を発揮するあらゆる手段らしいんだって。  その場合、射出というより放出することが多いらしいって言ってた。  で、私の場合、まずは適正なんだけど、回復と防御補助の方が効果を出しやすいんじゃないかって。  魔法や武術ばかりじゃなく、他の人の魔力の傾向を判定することまでできるなんて、あの人すごいなー。  で、体の一部や道具を使って射出するより、放出する方が適してるって言われた。  即効性は魔法と比べて低いけど、範囲はより広くなるし対象の数も多くできるんだって。  もちろん調節も出来るし、消費した魔力は休憩しなくても回復できるから、威力は低いけど私に適してるんじゃないかって。 「冒険者を選んだのは、選んだ仕事を間違えたようなものね。これからはきっと、『あなたがいてくれてよかった』って、みんなそう言ってくれるかもね」  誰かにそう言ってもらいたかった。  あの時までは、いてもいなくてもあんまり変わらなかった。  冒険者として成長していたかもしれないけど、成長前と成長後の差がよく分からなかったから。  だからうれしくて、泣きそうになった。
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