事情はそれぞれ

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 女魔法剣士さんがこの部屋から出て行った。  あのピンチを切り抜けそうなくらい十分回復したから帰るって。  最後に「コルトちゃんのおかげで助かったわ」って言ってくれた。  ちょっとだけ泣いた。  結局、あの人の名前聞けなかった。  あの人も思い直したらしい。 「私も善人じゃないからねー。再会した時には、恩着せがましいこと言っちゃうかもしれないし」  って、いたずらっぽく笑ってた。  恥ずかしい思いはまだ消えない。  けど、それで元気になってくれる人がたくさんいるなら、頑張ってみようと思った。  だって何もしなければ、今までと同じままだもの。 「へたくそー」  とか言われるかと思った。 「聞こえないぞー」  って言われるかと思った。  魔法剣士さんみたいに、私を擁護してくれる人いなくなったから。  コウジさんは相変わらず。  確かに私のことをそれなりに目をかけてくれるけど、魔法や魔力、コウジさん以外の世界の話題になると関知しないって感じになるの。  だから私のことは、私が考えなきゃいけない。  自分の能力のこと、自分に出来ること、そのほかいろいろ。  でも、当たり前のことなんだけどね。  それでもやっぱり、バツの時間は恥ずかしいよー。  だから最初は、力いっぱい目をつぶりながら歌ってた。  少しだけ気になって、薄目で周りを見てみた。  みんな私のこと注目してたりするのかなって。  どうしても気になって。  そしたら、そばで聞いてる人達は……眠ってた。  楽な姿勢で、みんな穏やかな顔をして寝てた。  最初は遠くにいた人達も、いつの間にか近くに寄って来てて体を横にしてた。  歌ってる間、そんな不満の声は聞こえなかった。  聞きたい人は、私の声が聞こえる所に移動してた。  私がもっと大きな声を出せたら、その人達は移動せずに済んだんだよね。  次のバツの時間は、もう少し大きな声を出してみた。  移動する人も増えた感じだけど、ちょこっと動いたって感じ。  聞こえる範囲が増えたってことだよね。  時々、私を見る人もいる。  って言うか、見る人が増えた。  でも見られる時間はそんなに増えてない。  みんなすぐに眠っちゃうから。
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