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「普通ここに辿り着くようなダンジョンは、入り口かその付近で手続きを取るもんだ。何人グループで中に入るか、何人出てきたか、それはグループのメンバーかどうかってな」
中には魔物が仲間に成りすまして一緒に出てくるってケースもあるらしい。
その世界に住む者達の知恵ってことは。
けどやっぱり俺にはよく分からん。
「つまりこの場合、入る時にはグループみんなと一緒に手続きをして、探索している最中に仲間達は先に脱出してこの子以外は外に出たという報告をする、と。それのどこに問題が?」
「みんなを逃がすために残ったんじゃない。みんなから、ここに残るように言われたんだと」
嫌な予感がする。
けど、その予感は当たった。
「私……みんなが逃げるための生贄にされたんです……」
うわぁ……。
かける言葉が見当たらない。
「おそらくはなっからそれを目的にして仲間にしたんじゃねえかと思ってる。しかしその役目を持たせる相手は誰でもいいわけじゃねぇ」
そりゃそうだ。
何とか一人で生還して、辺りにそのことを言いふらされでもしたら、そいつらはあっという間に爪はじきにされるだろうからな。
「帰る場所がない。居場所もまだ確定してない。そして冒険者としての腕も成熟していない者をスカウトして、捨て石に、か」
胸糞悪い話を聞かされちまった。
「いくら俺らが可哀そうと思って保護しても、そいつらやそいつらの仲間と遭った時、この子はまともじゃいられねぇぞ。そいつらは非難の的になるだろうが、だからってこの子に味方が増えるってわけでもねぇ」
かばいきれなかったり守り切れないことも起きるってことか。
それに、一度そんなことをさせられると、似たような方針を持つグループに目をつけられて同じことを何度もさせられる羽目になる、と。
将来ある若い冒険者を食い物にするっていうのが何と言うか……はらわたが煮えくり返る。
いや、ちょっと待て。
「……まさかそんな奴らもピンチに陥ってここに来る、なんてことは……」
「ない、とは言い切れねぇ。けどその可能性は、こいつの仲間が入り浸る盛り場で出くわす可能性よりは相当低い。弱い敵だらけのダンジョンからここに来たって話は一度も聞かないしな」
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