災難

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災難

「熱っ――!」  思わず俺は声を挙げた。手にしたヤカンを落とさなかったのは我ながら偉かったと思う。  コーヒーでも淹れようとお湯を沸かし、いざカップに注ごうとした時。確かに物音のようなものを聞いたのだ。で、そっちに意識を向けた所為で手元が狂い、熱湯はカップでは無く左手に注がれた。  急いで流水で冷やしたおかげか、幸いにも大事には至らなかった。しかし、手の甲は真っ赤になり軽く火傷状態だ。 「なんか、最近こういうこと多いよなぁ」  不満げに呟きが漏れる。本当に、最近こんなことが多いのだ。何かに一瞬気を取られて指先を切ったり、足をぶつけたり、何かにつまずいたり踏んづけたり……。  単なる不注意と言われればそれまでだが、今まではこれほど生傷の絶えない生活ではなかった。どれも大事に至らずに済んでいるのが不幸中の幸いと言えるだろうか。 「本当、ついてないわ」  やり場のない苛立ちをぶつける場所も無く、大きくため息を吐くより他に無かった。
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