離れと過去と終わり

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離れと過去と終わり

 「和尚様~和尚様~助けてけろ~」 小僧はやっとの思いで和尚が住む離れまでやってきた。 「山姥に食われちまうだ、早く助けてけろ」 小僧がどんどん戸を叩くが和尚は 「今、餅を食うとるんじゃ。少し待っとれ」 なんてのんきなことを言っている。もう少しで戸が壊れてしまうんじゃないだろうかという勢いで小僧は戸を叩く。 「いい子にするから早く開けてけろ!」 すぐそこには山姥が 「見えたぞ!まっとれ」 山姥はついに小僧の目と鼻の先までやってきた。小僧がどんどんと戸を叩くとやっと和尚が戸を開けた。小僧も入ってきたが山姥も一緒になって入ってきた。小僧は和尚様と一緒に食べられちまうんじゃないだろうか、と思ってもう覚悟を決めていた。すると突然、和尚が口を開いた。 「まーちゃん、いい加減おらのところの弟子を襲うのはやめてけろ」 ほとほと困り果てた顔で、和尚は言った。すると、山姥はうつむいて 「しょうちゃんがいけないんじゃ。私を一人にするから私、寂しくて寂しくて・・・」 小僧はあっけにとられて言葉が出ない。 後から聞いたところによると二人は昔、恋仲関係だったらしい。しかし、和尚は仏門に入るために山姥と別れ、修行に身を投じた。山姥はそんな和尚に振り向いてほしくて和尚の弟子たちを襲っていたのだ。 山姥は和尚に好きだという気持ちを伝えるが、それを和尚はのらりくらりとかわす。暖簾に腕押しとはまさにこのこと。蚊帳の外だった小僧がそのやり取りに呆れ、ついに言い放った。 「和尚様!山姥の気持ちに応えてあげねばならんじゃねえか!山姥のやり方はよくないかもしれないけんど、一途に和尚様を思っているんじゃねえか!今、男を決めねえでいつきめんだ!」 和尚は小僧に言われて、少し考えた後こういった。 「確かに、ブッタ様にも子どもはいた・・・やまちゃん、少し遅いかもしれないけど一緒に暮らしてくれないか!」 山姥はうれしさからか涙をぽろぽろこぼしながら 「はい、喜んで!」 そう答えた。 そして三人はいつまでも幸せに暮らしましたとさ。
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