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びゅう。吹き荒ぶ風が窓を揺らす。すっかり葉が落ちてしまった校庭の木々は寒々しく、もはや弄ばれるものもない。
見上げた空も晴れてはいるけれど、薄っすら灰色の雲がかかりどうにもすっきりしない。しかしそんな俺とは対照的に、校庭では運動部の連中が頬を真っ赤にして走り回っていた。元気なことだ。その中には友人の鈴木の姿もあって、正直よくやるわ、とぬくぬくと暖房の効いた図書室にいる身としては思う。
もっとも鈴木にすれば、図書室独特の紙の匂いも、強制的な静けさも耐えられないらしい。そもそも漫画以外三ページ読めば限界と真顔でいうのだから、図書室とは縁がない。せっかく近場の高校では一番立派な蔵書数だというのに。もったいないことだ。この前付き合いで付いてきた際に俺のおすすめを借りさせてみたが、きっとおそらく絶対に読んではいまい。
(お、トライ)
ぼんやり眺めてると、鈴木が体ごとゴールに滑り込みアーモンド型のボールを地面につけた。そういえば近々練習試合があるといっていたか。奴は一年ながらにレギュラーを目指しているそうなので、気合も入るのだろう。「目指せ、ナンバーエイト」。なんのこっちゃ。運動好きでもなく体育会系のノリにもついていけない俺には全くもって理解しがたい。そのせいか、ツルんでいると不思議がられることがままある。まぁ、片やデカイ、ゴツイ、ムサイの三拍子揃った厳つい運動部系男子。片や俺は、チビでガリでヒョロの文化系男子である。敢えて自分をよくは言わない。俺は正直者である。
ゆえに、知らない人間から見たら、じゃれあいもカツアゲのように見えるわけだ。鈴木は凹んでいたが、俺は大笑いした。
あまりに正反対な俺たち。だからといって劇的な絆みたい何かがあるわけではない。俺と奴の出会いは生後半年。預けられた保育園で隣どうしで寝かされていた時からの腐れ縁である。
だが、まさか義務教育を過ぎても同じ学校に通うことになろうとは流石に思わなかった。俺は成績と図書室の大きさで高校を決めたが、鈴木はラグビー部の強さで高校を決めたという。奴がそこまで部活に重きを置いていたとは知らなかった。いや、部活に青春を捧げる姿を否定はしまい。レギュラーになって試合で活躍すればモテると信じている希望も砕くまい。
俺は優しい友人である。
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